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第81話 第一回口頭弁論

Author: なつめ
last update publish date: 2026-08-30 07:10:46

 法廷の空気は、病院の白さとは違う冷たさを持っていた。

 高い天井。整然と並ぶ椅子。木目の濃い机。紙をめくる音と、誰かが小さく咳をする音だけが、静かに響いている。詩乃は原告席に座り、膝の上で両手を重ねていた。隣には旭がいる。その存在がなければ、背筋を伸ばしていることさえ難しかったかもしれない。

 向かい側には怜司がいた。

 黒いスーツを隙なく着こなし、表情はいつも通り整っている。けれど、その目の奥にはわずかな硬さがあった。鷹宮邸でも、病院でもなく、法廷で向かい合う夫婦。その事実が、二人の間に積もった七年を静かに照らしていた。

 詩乃側は、婚姻関係がすでに回復不能なまでに破綻していると主張した。

 継続的な精神的冷遇。妻として尊重されなかった七年間。芽衣との関係。病院で頬を打たれた事実。妊娠を知らせようとした詩乃の声が届かなかった五年前。そして、奏音の存在を知ったあとも、怜司が離婚を拒み、母娘の生活を管理しようとしたこと。

 言葉は淡々としていた。

 けれど、その一つひとつを聞くたび、詩乃の身体の奥に過去の痛みが戻ってくる。食卓で待ち続けた夜。呼ばれない名前。玄関で外した指輪。白い病院
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